ダークウェブでは、企業情報や最新のランサムウェアなどが売買されています。そのため、「ダークウェブにアクセスすれば、自社の流出情報や最新のランサムウェアを把握できるのでは?」と考える方もいるでしょう。
しかし、ダークウェブにアクセスする前には、メリットやリスクを把握することが重要です。本記事では、ダークウェブとランサムウェア攻撃との関連、ダークウェブにアクセスするメリットやリスク、およびアクセス手順を解説します。
ダークウェブとランサムウェア攻撃
ダークウェブでは、ユーザーは匿名で活動できるため、盗んだ企業の機密データやハッキングツール、ランサムウェアの売買などが行われる違法行為のプラットフォームとして知られています。
ランサムウェアとは、被害者のファイルを暗号化し、復号キーと引き換えに身代金の支払いを要求するマルウェアの一種です。近年では、犯罪者が被害者のデータを暗号化するだけでなく、身代金を支払わなければ機密情報を公開すると脅す「二重恐喝型ランサムウェア攻撃」が増加しており、年々その手法は高度化しています。
例えば、ランサムウェア攻撃の被害に遭い、身代金を支払ったとしても、機密情報がダークウェブで売買されるリスクは高いです。弊社がダークウェブ調査ツール「ダークトレーサー(DarkTracer)」を用いて、国内主要100企業のダークウェブ流出調査を実施したところ、すべての企業で流出が確認されました。
サイバー攻撃が高度化した現代においては、サイバー攻撃対策だけではなく、ダークウェブへの情報流出対策も必要です。
ダークウェブにアクセスするメリット
ダークウェブにアクセスするユーザーの多くは違法行為を目的にしていますが、サイバーセキュリティの専門家や必要な予防措置を講じている企業は、ダークウェブへのアクセスで下記のメリットを得られます。
● 自社の情報流出状況を確認できる
● 最新のマルウェアと高いセキュリティ対策への理解を深められる
それぞれのメリットについて解説します。
自社の情報流出状況を確認できる
ダークウェブのフォーラムやマーケットプレイスを監視することで、漏えいした認証情報や機密データなどを特定できます。自社の流出状況を早期に確認できれば、被害を軽減し、さらなる侵害を防止するための行動を即座に取ることが可能です。
最新のマルウェアと高いセキュリティ対策への理解を深められる
ダークウェブでは、最新のマルウェア種類や攻撃手法、新たな脅威などが売買されています。ダークウェブにアクセスし、サイバー攻撃についての理解を深めれば、セキュリティ対策の強化やネットワークとデータを保護するための効果的な対策へとつなげられます。
ダークウェブにアクセスする4つのリスク
ダークウェブにアクセスするメリットは存在しますが、その一方で潜在リスクを認識することが極めて重要です。ダークウェブにアクセスする前には、下記のリスクを考慮しましょう。
● 犯罪に巻き込まれる可能性
● 犯罪被害に遭うリスク
● 法執行機関に関するリスク
● マルウェアやその他のウイルスによる感染に関するリスク
犯罪に巻き込まれる可能性
ダークウェブにアクセスすることで、違法行為や犯罪ネットワークに身をさらすリスクがあります。例えば、意図せずに違法コンテンツに接触しただけで、刑事告訴や風評被害につながり、深刻な法的影響を及ぼすことがあるのです。
犯罪被害に遭うリスク
ダークウェブは、個人情報の盗難や詐欺、その他の不正行為に積極的に関与するサイバー犯罪者の温床となっています。そのため、ダークウェブにアクセスすることで、フィッシング攻撃やランサムウェア攻撃などのターゲットになる可能性が高いです。
法執行機関に関するリスク
意図せずにダークウェブで違法行為や犯罪ネットワークに関与することは、法執行機関の注意を引き、法的措置につながる可能性があります。
例えば、欧州刑事警察機構はインターネットセキュリティ企業と協力し、当時ダークウェブで最も大きなマーケットプレイスの1つであったHansaの管理者を逮捕して、マーケットプレイスを閉鎖に追い込みました。また、Hansa市場で売買したユーザーの情報はユーロポールに引き渡されたのです。
犯罪にかかわっていなくとも、ダークウェブにアクセスすることで、余計な誤解を生みだすリスクがあります。
マルウェアやその他のウイルスによる感染に関するリスク
ダークウェブは、マルウェアやウイルスなどの悪意あるソフトが豊富なことで有名です。ダークウェブ上にある特定のウェブサイトへのアクセスやファイルのダウンロード、URLのクリックなどをすることで、高い感染リスクが生じます。
ダークウェブにアクセスするユーザーは、細心の注意を払い、マルウェア感染から身を守るために強固なセキュリティ対策を実施しなければいけません。
ダークウェブへのアクセス手順
ダークウェブへのアクセスは極めてリスクが高いですが、ここからは安全性を高めるアクセス手順をご紹介します。なお弊社は、個人や企業がダークウェブにアクセスすることは推奨していません。
仮想プライベートネットワーク(VPN)を使用する
VPNとは、ユーザーのデバイスとインターネットとの間に安全で暗号化された接続を確立するものです。VPNサーバーを介すことで、ユーザーのIPアドレスを暗号化し、プライバシーとセキュリティを強化します。これにより、ダークウェブにアクセスする際に、ユーザーの身元や位置情報が漏えいするリスクを軽減できます。
Torブラウザを活用する
出典:Tor
ダークウェブへのアクセスには専用ブラウザが必要です。Torブラウザは、匿名性を維持しながらダークウェブにアクセスするために設計されたブラウザです。
Torブラウザを使えば、ボランティアが運営するサーバーのネットワークを経由し、複数回にわたりアクセスデータを暗号化することで、ユーザーへの追跡を困難にします。
企業ができるダークウェブ対策3選
ダークウェブで情報流出状況を確認するのと同様に、情報流出対策も必須です。ここからは、ダークウェブへの情報流出対策3選をご紹介します。
セキュリティツールの導入
ファイアウォールや侵入検知システム、高度なエンドポイント保護などのセキュリティソリューションを導入することで、ダークウェブへの情報流出につながるサイバー攻撃を防止できます。また、継続的な監視と脅威インテリジェンスツールを導入すれば、潜在的な脆弱性と脅威に関する情報を得られます。
従業員教育
定期的に従業員教育を実施し、フィッシング詐欺やソーシャルエンジニアリング、悪意のあるダウンロードに関する意識を高めることで、サイバー攻撃に巻き込まれる可能性を軽減できます。
例えば、簡単なパスワードで社内のクラウドサービスを利用する従業員がいる場合、そこからログインが突破され、機密情報が漏えいするリスクが高いです。従業員一人一人のセキュリティ意識を高めるためにも、定期的にセキュリティ対策の勉強会を開催しましょう。
ソフトウェアの定期的なアップデート
パロアルトネットワークスの調査によれば、サイバー攻撃のきっかけとして2番目に多かったのが「ソフトウェアの脆弱性」でした。また、脆弱性の公開から最短15分でサイバー攻撃が仕掛けられることも判明しているため、すべてのソフトウェアやアプリケーションなどを最新の状態にアップデートしておくことが重要です。
定期的なアップデートにより、既知の脆弱性にパッチが適用され、サイバー攻撃のリスクを軽減できます。
まとめ
ダークウェブへのアクセスは、主に違法行為や犯罪ネットワークとの関連性から、大きなリスクを伴います。サイバーセキュリティの専門家や企業にとって、いくつかのメリットがあるかもしれませんが、リスクにあったメリットを得られるのかを判断することが重要です。
現代の企業がするべきセキュリティ対策は2つ。1つめがセキュリティソフトの導入や従業員トレーニング、定期的なソフトウェアアップデートにより、サイバー攻撃を防止することです。しかし、高度化するサイバー攻撃を完全に防ぐことは不可能なため、2つ目の対策被害の軽減が重要になります。
弊社の調査でも判明しているように、どれだけセキュリティ対策をしても、知らぬ間にダークウェブに情報流出している可能性は極めて高いです。被害を最小限に抑えるためにも、ダークウェブの監視を行いましょう。
「ダークウェブに情報流出しているかも」、「流出状況を確認したい」と不安に感じた場合、ぜひ下記フォームより、弊社が提供するダークウェブの無料簡易調査をご利用ください。